最近、小夜子さんはずっと空を見ている。
何もしていないとき。
授業の合間。
ご飯の合間。
会話の合間。
つまり、そうすることのできる間は、ずっとだ。
不思議なので訊いてみた。
どうしてずっと空をみてるの?
小夜子さんは少しだけ考え、
ああそのこと、と微笑んで、
いつもの、あの不思議な優しい声で、
「意味はね、あまりないの」
「けれど、あまり意味がないことをしてしまうことって、ないかしら」
「たとえば、痛いところを、痛いと知っているのに、ちょっとだけ触ってみたりしない?」
「たしかめてもしかたがないことを、たしかめてもしかたがないと知っているのに、
それはわかっているのに、
どうしてか、
無意識に、
なんとなく、
それをたしかめてしまうことはない?」
つまり、そういうことなの、と小夜子さんはいった。
わたしは、そういわれると確かにそういうことはあるな、と思ったので、
そうだね、そういうことって結構あるかも、と答えた。
それから、そう思えたことが嬉しくなって、えへへへへと笑った。
「じゃあ、また明日。小夜子さん」
「あのね、私、明日、学校には行けないと思うの」
「え、どうして?なにか用事?明日どっかに行くの?」
「そうかも」
小夜子さんは皆勤なのにもったいない。
でも、小夜子さんはこうみえて頑固なので、休むといったらどうしても休むだろう。
小夜子さんのいない学校はつまらないけれど、しかたがない。
小夜子さんは、何の理由もなくそういうことをする人ではないのだ。
きっと明日、小夜子さんにとって、とても大事な用事があるんだろう。
「じゃあ、しかたないね」
「ええ、しかたがないわ」
わたしが、じゃあまたね、というと、
小夜子さんはいつものように、さようなら、といった。
それから、わたしたちは駅の前で別れた。
小夜子さんは、いつもの電車に乗って隣の街に帰っていった。
その日の夜、
隣の街に流れ星が降った。
ものすごい音がして、
向こうの空が、曇りの日みたいに明るくなって、
風と砂がびょうびょうと吹いた。
次の朝、隣の街には大きなクレーターができた。
テレビはどこも、流れ星と隣の街のことを映している。
空にはクレーターを見下ろすために、たくさんのヘリコプターが飛んでいた。
そのクレーターの真ん中に
小夜子さんは