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2024/03/29 08:30 |
諦観

最近、小夜子さんはずっと空を見ている。


何もしていないとき。

授業の合間。

ご飯の合間。

会話の合間。

つまり、そうすることのできる間は、ずっとだ。


不思議なので訊いてみた。

どうしてずっと空をみてるの?


小夜子さんは少しだけ考え、

ああそのこと、と微笑んで、

いつもの、あの不思議な優しい声で、


「意味はね、あまりないの」

「けれど、あまり意味がないことをしてしまうことって、ないかしら」

「たとえば、痛いところを、痛いと知っているのに、ちょっとだけ触ってみたりしない?」

「たしかめてもしかたがないことを、たしかめてもしかたがないと知っているのに、

それはわかっているのに、

どうしてか、

無意識に、

なんとなく、

それをたしかめてしまうことはない?」


つまり、そういうことなの、と小夜子さんはいった。


わたしは、そういわれると確かにそういうことはあるな、と思ったので、

そうだね、そういうことって結構あるかも、と答えた。

それから、そう思えたことが嬉しくなって、えへへへへと笑った。


「じゃあ、また明日。小夜子さん」

「あのね、私、明日、学校には行けないと思うの」

「え、どうして?なにか用事?明日どっかに行くの?」

「そうかも」


小夜子さんは皆勤なのにもったいない。

でも、小夜子さんはこうみえて頑固なので、休むといったらどうしても休むだろう。

小夜子さんのいない学校はつまらないけれど、しかたがない。

小夜子さんは、何の理由もなくそういうことをする人ではないのだ。

きっと明日、小夜子さんにとって、とても大事な用事があるんだろう。


「じゃあ、しかたないね」

「ええ、しかたがないわ」


わたしが、じゃあまたね、というと、

小夜子さんはいつものように、さようなら、といった。


それから、わたしたちは駅の前で別れた。

小夜子さんは、いつもの電車に乗って隣の街に帰っていった。




その日の夜、

隣の街に流れ星が降った。


ものすごい音がして、

向こうの空が、曇りの日みたいに明るくなって、

風と砂がびょうびょうと吹いた。


次の朝、隣の街には大きなクレーターができた。

テレビはどこも、流れ星と隣の街のことを映している。

空にはクレーターを見下ろすために、たくさんのヘリコプターが飛んでいた。







































そのクレーターの真ん中に

小夜子さんは

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2007/11/09 00:00 | Comments(0) | TrackBack() | 短片

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