「あ、ちょっと。キミ」
コンビニに行く途中の交差点で、おっさんに呼び止められた。
「なんですか?」
私は努めて胡散臭そうに見える顔をし、ポケットの中で携帯を探しながら尋ねた。
「あそこに」
そう云いながらおっさんは歩道橋の階段のあたりを指差す。
指の先にはおっさんがもう一人。
おっさんの眼鏡がきらりと光るのを見ながら、おっさん尽くしだと私は思った。
「男の人が居るだろう?」
「はあ確かに」
そうおっさんがいう。おっさんのネクタイがよれよれなのが気になった。
「あの人はちょっとおかしい人だから気をつけなさい」
「はあ」
おっさんは、それだけいうともう私には目もくれなかった。
変なおっさんか。それはちょっと嫌だ。
目を合わせないように歩道橋を昇る。
「あ、ちょっと。キミ」
案の定おっさんに呼び止められた。
「なんですか?」
私は努めて胡散臭そうに見える顔をし、ポケットの中で携帯を探しながら尋ねた。
「あそこに」
と云いながらおっさんは角の家の塀のあたりを指差す。指の先にはさっきのおっさん。
おっさんの額がきらりと光るのを見ながら、おっさん尽くしだと私は思った。
「男の人が居ただろう?」
「はあ確かに」
そうおっさんがいう。おっさんのネクタイがしわしわなのが気になった。
「あの人はちょっとおかしい人だから気をつけなさい」
「はあ」
おっさんは、それだけいうともう私には目もくれなかった。
大人は大変なのだな、と思って、パンを買って遠回りで帰った。
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