アフリカのサバンナから、本場のライオンがやってきた。
目的は日本の獅子舞の視察だ。
この日のために必死に練習を重ねてきた、
岸田兄弟の渾身の獅子舞を見ながら、
ライオンは緑の眼鏡を額に上げて秘書にささやく。
「どうも腰の振りがいまいちだな・・・」
友達に、やたらと運がいい男がいる。
この間、家にきたときお茶を出したら、茶柱が4本も立っていた。
「あのさ」
「なに?」
「キョロちゃんのカンヅメ、いらない?宇宙缶とかさ」
「いや、あんまり・・・なんで?」
「余っちゃってね」
6缶あるそうだ。
帰り際に、じゃあ金のエンゼルいる?という。
や、いらないよ。
ひろむ君の手品はちょっと変わっている。
使うのは、ドラム缶と布。
ドラム缶に布をかぶせ、3つ数えて、布を取るのだ。
「スリー、ツー、ワン・・・、はいっ!」
ひろむ君の掛け声と共に、突如轟炎と、噴煙が巻き起こり、
ドドドドドドドと音を立て、ドラム缶は宇宙に向かって発射される。
白い飛行機雲をまっすぐ伸ばして、
ひろむ君のドラム缶はどこまでも高く飛んでいく。
そして二度と帰ってこない。
いつだったか、手品の仕掛けがわからないのが悔しくて、
ひろむ君に内緒で尋ねたことがある。
どうやってるの?と訊くと、
ひろむ君は「ぜったい内緒だよ?」といった後、
「僕も、どうしてああなるのか、わからないんだ」
と、そっと耳打ちしてくれた。
先日発表されたオオサワ博士の研究は、
学会で注目され、様々な議論を呼んでいる。
『自分の耳を王様の耳と取り替えられてしまったロバについての研究』
「我々は、王様に同情するあまり、
その影にあったもうひとつの悲劇について、
あまりにも無関心だったのではないか、
そう、わたくしは考えるのであります」
オオサワ博士は、壇上でそのように述べたという。
昼休みに、総務の林田さんが怖い話をしてくれた。
「遊園地にコーヒーカップってあるでしょう?」
「ありますね」
「でも、コーヒーは入っていないでしょう?」
「入ってませんね」
「あれはね、あまり調子にのってまわし過ぎると・・・」
「ま、まさか」
「そう・・・、のっている人が溶けてコーヒーになってしまうの」
「・・・コーヒーにですか」
「モカ、よ」
怖いから、もう乗らない。
飛行機雲が出ていた。
西北に伸びる飛行機雲の端は、
途中で急に黒くなり、
急に、ぷつりと途切れていた。
夕刊には、飛行機墜落の記事。
おっさんのネクタイが、目の前にぶら下がっている。
小さな鳥が、沢山散らばっている柄。
変な柄だ。
ふと、ひっぱってみたくなった。
首とかしまるのかな。
しまるだろうなー。
きゅ。
にゅ。
なぜか、おっさんのひげが伸びた。
もっとひっぱってみたら、もっと伸びた。
きゅきゅきゅー。
にゅにゅにゅー。
すっげえ怒られました。
禿げている。
裏返されたカメは、
しばらく空中に手足をわたわたさせる。
わたわた。
そのうち、引っ込む。
そうして、たまに揺れたりするけど、
あきらめて動かなくなるのだ。
わたしは、そういうカメを見るのが結構好きだ。
でも、じいさんはひっくり返すだけでいってしまう。
別にひっくり返したカメを見てたりしない。
一度、聞いたことがある。
「なんでひっくり返してるんですか」
「趣味じゃ!」
じゃ、って。
コピーをとりに行く途中、
交差点の真ん中に、
銀色のボールっぽいものが浮かんでいた。
なんだろう。
気になったけど、
周りの人たちは少しも驚いていない。
だから私も知らんぷりして通り過ぎた。
帰りに通った時には、
もう、
なくなっていた。
なんだったんだかはわからない。