ゆうちゃんの家にいく。
呼び鈴を押す。
ぴぽーん ぴんぽーん ぴ・・・ぽーん
ゆうちゃんの家の呼び鈴は、押し方を変えると色んな音がでるのが面白くて好きだ。
「はいはいはい・・・、あらみっちゃん、いらっしゃい」
「こんにちは。ゆうちゃんに、プリントを届けにきたんです」
「まあ、それはありがとう。それじゃあ、あがっていって。実はきのう新しい子が」
「ゆうちゃんはもう平気なんですか」
「ええ、もう熱なんかないんだけどね、意地張って寝てるの。ほら、この子なん」
「じゃあ、お邪魔します」
ゆうちゃんのお母さんは、爬虫類マニアだけど、とても優しいから好きだ。
階段をあがる。
とんとんとん
「あ、みーちゃんだー。おはよー」
「また寝てたんですか」
「ゆっきとあそびにきたの?」
「また寝てたんですね」
「せっかく来たんだから対戦しよーよー」
「ゆうちゃんと一緒なら」
「えええー、ゆっきリモコン投げてくるからやだー」
ゆうちゃんのお姉さんは、あんまり人の話を聞かないけど、面白いから好きだ。
廊下を歩く。
ぱたんぱたんぱたん
「あ、こんにちは」
「ああ、こんにちは」
「ゆうちゃんに、プリントを届けにきたんです」
「そうですか、それはありがとう」
「どういたしまして」
「うん」
「じゃあ」
「ええ、じゃあ」
ゆうちゃんのお父さんは、口下手であんまり会話が続かないけど、優しい目だから好きだ。
ドアをノック。
こんこんこん
「どちらさまですかー」
「さあ、どちらさまでしょう」
かちゃり、とドアがひらく。
「こんにちは、ゆうちゃん」
「こんにちは、みっちゃん」
「具合は如何?」
「見ての通り。そちらこそ、具合は如何?」
「見ての通り」
真面目な顔を見合わせて、それからわたしたちは吹き出して笑う。
ゆうちゃんは、わたしのことを知っているのに、ほんとうに笑ってくれるから好きだ。
みっちゃんの家に行く。
チャイムを押す。
キンコーン キンコーン キンコーン
このチャイムの音は好きだ。
「あら、ゆうちゃんいらっしゃい」
「こんにちはおばさん。あの、みっちゃんにプリントです」
「美知なら部屋にいるわよ」
「あ、じゃあお邪魔します」
「ええ、ゆっくりしていって」
みっちゃんちのおばさんは優しいけど、目が笑ってないから苦手だ。
階段を昇る。
とんとんとん。
「あ、ゆうちゃんじゃない。どうしたの?」
「みっちゃんにプリント届けにきたの」
「ねね、それよりいっしょに遊ぼうよ」
「えっとね、今日はピアノだから」
「そんなのいいじゃん?ほらこっちきなよ」
「ごめんね」
みっちゃんのお姉さんは優しいけど、いきなり耳を舐めたりするから苦手だ。
廊下を歩く。
とてとてとて
「あ、こんにちはー」
「・・・」
「みっちゃんにプリント届けにきたんです」
「・・・」
「あ、じゃあ」
「・・・」
おじさんはいつもニコニコしてるのに、私のことを無視するから嫌いだ。
ドアをノック。コンコンコン。
「なに?」
「みっちゃん、プリント持ってきたよ。大丈夫?」
「ああ、ゆうちゃん。ありがとう。もう平気よ」
「よかった。気にしないで」
「あ、ゆうちゃん」
「なに?」
「また、きてね。絶対よ?」
みっちゃんはいつもそう言って笑う。にっこり。
手首に包帯をぐるぐる巻かれて、右の足首とベットを手錠で繋がれているみっちゃん。
みっちゃんはなにもかも全部分ってて笑う。
それでも私はみっちゃんが好きだ。